column

目を覚ませ、と彼は言う
[ AWAKE ]

そうは言われても、こっちは非日常にトリップしたくてラルクを聴いてるのに、無茶な!

ひとことで感想を述べるなら、そんな感じでしょうか。
いやいやビックリ。リアルにも程がありすぎます!おとうさん!
すっかり大人になっちゃって…。

「AWAKE」というアルバム全体を見ればきっと、若々しくアグレッシブな面が注目されると思う。
だけどhydeの歌詞世界は、今までになくとことん保守的で、庇護者たる彼の側面を見せつけられる。

今までも、人類の過ち、愚かさを題材にした歌はいくつもあったけれど
それを歌うとき、作るとき、彼の中には人の愚かさを嘆く神の視点と、
それを嘲(あざけ)る悪魔の視点と、群衆の中の無力な一人としての視点とを兼ね備えていた。
だからこそ、そのカリスマに圧倒され、悪魔のささやきに魅了され、やるせなさを共感できた。

今回、それが感じられない。
守るべき者を得た今、「なにもかも破壊してしまいたい衝動」などを歌えば嘘になる。
だからこそ、あえて、神の視点も悪魔の視点も切り捨てて、ひとりの人間として歌っている。
愛という確信、それを失う恐怖。リアルだ。

そんな世界と、私は、どこで繋がったらよいやら。
配線コードの端っこ持って、ウロウロしている状態です。

そういう意味では「LOST HEAVEN」だけが私の心の拠り所なんですが
これは「鋼の錬金術師」の世界に入り込んだもうひとりの彼が書いた詞なので、hyde作詞であって、そうでない。
むしろ「New World」や「twinkle,twinkle」と一緒のカテゴリーかも。
結局、純然たる「AWAKE」に、薄暗い部分で繋がる事はできなかったのだけれど、
あえて嘘を無くしたおかげで、彼の歌唱は冴え渡り、その胸の内は痛いほど伝わってくる。

何かを失い、何かを得る。
これぞ「等価交換」の法則。

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